国宝級の見目麗しき器で、地元食材を楽しめる期間限定レストラン USEUM SAGA(ユージアム サガ)


2016年に行われた有田焼創業400年のイベントとして大人気だった幻のレストラン「USEUM ARITA(ユージアムアリタ)」。佐賀を代表する人間国宝(重要無形文化財保持者)ら5氏の器を使い、料理を楽しめる体験型美術館として連日予約が殺到し、会期を延長するほどの大盛況ぶりでした。その後は惜しまれつつ一旦幕を閉じたUSEUM ARITAでしたが、2018年3月より、今度はさらにパワーアップして佐賀市内に「USEUM SAGA」として新たにオープンしました!! 

会場は「さがレトロ館」。明治20年、佐賀県の警察部庁舎として建てられた、クラシカルな洋館です。 


「さがレトロ館」は、佐賀県庁や佐賀城公園からも歩いてすぐ。明治時代の風情を残した木造洋風建築です。日本人棟梁による和洋折衷様式で、下見板張りの外壁、半円形アーチ型の大きな窓などが特徴的。2階は普段はレストランとして、素材にこだわった料理を提供していますが、2018年3月17日(土)~2019年1月14日(月・祝)の期間だけ、「USEUM SAGA」として特別な食空間が演出されます。明治時代にタイムスリップしたような、雰囲気ある部屋のあちこちに飾られているのは、香蘭社が宮内庁へ納品するための器の設計図を複製したもの。香蘭社とは明治8年(1875年)に設立され140年以上続く老舗の陶磁器製造会社で、明治時代には世界各国で行われた万博で数々の賞を受賞し、海外からも高い評価を得ています。本来なら門外不出の設計図は、現物に近いくらいかなり精巧に描かれ、まるで一枚の絵画を見ているようです。 

さがレトロ館。店内の様子。

香蘭社の設計図(複製)が飾られた窓辺。1枚1枚見応えがあります。 


さて、早速お待ちかねの料理が運ばれて来ました。「和魂洋才五膳」(3,500円)は、人間国宝・三右衛門(今右衛門窯、柿右衛門窯、中里太郎衛門陶房)の器に盛り付けた特別な御膳。通常なら美術館に陳列されているような芸術性の高い器に料理が盛られ、すぐ目の前に運ばれて来るのです。実際手に取って、その触感を確かめることもできる、またとない機会です(一皿の価値を想像すると、ちょっと手が震えますが)。前回のユージアムアリタのときは、各窯元ごとに全てのメニューが構成されていましたが、今回は1つのコース内で窯元をミックスし、様々な作り手の器を楽しめるようになりました。

前菜は川副町の光樹トマトをジュレ仕立てに。フルーツのような瑞々しいトマトの甘みに驚きます。器は有田町出身の陶芸家で人間国宝の井上萬二氏。 


サーモンのアーモンド揚げ。サクサクとした歯ごたえのアーモンドが良いアクセント。器は井上萬二氏。白磁の第一人者とも呼ばれ、爽やかな波模様が魚料理に映えます。


「佐賀の野菜畑」と名付けられた一品。季節によって内容は変わるそうですが、旬の野菜が花束のように色とりどりに詰まっています。器は柿右衛門窯。17世紀より続く伝統的な窯元で、繊細な赤絵が特徴的です。  


メインは佐賀牛のローストビーフ。ニンジン、マスタード、紫イモのソースで味の変化を付けて。柔らかく温かな印象のブルーグレーの独特な色合いが特徴的な器は中島宏氏。青磁を極めた人間国宝で、このイベントが始まる少し前の3月7日に76歳で惜しくもこの世を去りました。 


 もう一つのコース「和魂洋才コース」(3500円)は、鹿鳴館で使われていた器と全く同じものを熟練の職人が手書きで精密に再現したという復刻版の特別シリーズ。制作には半年掛かりだったとか。ずらりと並ぶと惚れ惚れするような艶やかさです。クラシカルな建物の空間と相まって、ふと明治時代にタイムスリップしてしまったような、不思議な気分を味わえます。

10年間しか存在しなかった幻の「精磁会社」の復刻版。器の裏側の銘も忠実に再現しています。明治伊万里と呼ばれる、瀟洒な竹文の色絵が特徴的です。 


気軽に楽しめるカジュアルなメニューもあります。佐賀のご当地ソウルフードといえば、シシリアンライス。県内では30店以上のカフェやレストランなどで食べられ、佐賀っ子にはおなじみの料理です。温かいご飯にサラダ、肉、マヨネーズをかけたものが基本形。ビジュアルは今どきのカフェ飯っぽい雰囲気がありますが、佐賀では昭和50年頃からある定番メニューだそうです。

幕末維新博とかけて、「志士リアンライス」(1,500円)と名付けられたメニュー。器は明治期に流行した「赤濃金彩唐草」と呼ばれるモチーフで、豪華で気品あるデザインは当時の洋の文化への憧れが感じられます。 


通常メニューの他には、ゲストシェフを招いたスペシャルなコース料理のイベントも開かれます。毎月開催される「トップシェフデイ」では、国内外で活躍する有名シェフを招き、一日限り、唯一無二のディナーが登場。今をときめく料理人と、佐賀を代表する器がコラボレーションし、あっと驚くような熱い饗宴が催されます。この日のために新たに制作された、特別な器が登場することもあり、料理に器に室礼に、と終始目が離せません。トップシェフデイは完全予約制であり、USEUM SAGAのWebサイトに詳細情報が出るので要チェックです。 

さがレトロ館の周りには、佐賀城跡や大隈重信記念館など、観光スポットがいくつか点在しています。お堀の付近には気持ちのいい遊歩道もあるので、食事の前後には佐賀の街散策も併せて楽しんでみてください。 


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USEUM SAGA 

https://www.useumsaga.jp 

期間:2018年3月17日(土) 〜 2019年1月14日(月・祝) 

場所:さがレトロ館 (〒840-0041 佐賀県佐賀市城内2-8-8) 

時間:11:30 - 15:00 / 17:30 - 22:00 毎週月曜日・年末年始休業 

予約:0952-97-9300 


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文:江澤 香織