イラストレーター・安西水丸さん著の鳥取の民芸エッセイ『鳥取が好きだ』発刊!

24歳の頃から鳥取県の民芸品に魅せられ、それ以来幾度となくこの地のつくり手を訪ねてきたイラストレーターの安西水丸さん。今回発刊する本は、その鳥取の民芸への愛と歴史について書き遺していた文章をまとめたものです。

「ぼく、雨男なんですよ」。晴れていると思った空がたちまち雲に覆われ、風が吹き雨が通り過ぎる日本海側特有の気候は、水丸さんにぴったりだったのかもしれないと思います。


鳥取県は、日本の民芸の歴史の中でも独自の発展を遂げてきている重要な場所でもあります。その理由は、民芸品のつくり手をサポートしていたプロデューサー・吉田璋也という人物がいたからです。医師でもあった吉田が柳宗悦と出会い、影響を受け「民芸のプロデューサー」として新作民芸運動を始めたのです。水丸さんは「この人がいなかったら鳥取県はどうなっていただろう」というくらい吉田の功績に感心しています。

本書では水丸さんが愛用していたものを通して、吉田の軌跡をはじめ、木工、陶芸、染織、和紙など数々の手工芸品から風土まで、イラストレーションと写真も盛りだくさんで紹介しています。やっぱり水丸さんが選ぶものってどこか独自のセンスがあるんです。読んでいると、どんなところに惹かれたのかがわかります。



また、鳥取の景勝地についても紹介しています。鳥取といえば砂丘がまずいちばんに頭に浮かぶ人も多いと思いますが、海も山も温泉もある自然豊かな土地でもあります。灰色の空と緑がかったブルーの海、黄色い砂丘の色のコントラストはいつ見ても心に沁みてきます。

また、自然が豊かということは美味しい食べ物とお酒も豊富です。日本海側の魚介は季節ごとに美味しいものがあります。これは紹介しだすときりがないので、少しだけの紹介となっておりますが、、、。



代表的なスポットもいいのですが、実際に旅をしてみると田園風景とともにある古い石州

瓦屋根の民家や小さな港町の路地、商店などの風景に、心をぎゅっとつかまれる瞬間が幾度となくあるのです。魅力的な手工芸品のつくり手も、載せきれないほどまだまだ存在しています。自分のお気に入りのものやつくり手さんを探してみるのもいいですね。この本で少しでも興味が湧いたら、ぜひ鳥取を訪れてみてください。



『鳥取が好きだ。』 安西水丸 著

河出書房新社刊

本体1.600円+税

http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309026862/


文・ 写真  佐藤暁子